配偶者は、いくらまで相続税がかからない?(配偶者の税額軽減)
亡くなった方の配偶者には、受け取った遺産の額に応じて相続税を軽くする制度があります。いくらまでかからないか、分け方で税額がどう変わるか、使うための条件をまとめます。
結論
配偶者が受け取った遺産の額が、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分にあたる額のどちらか多い額までなら、配偶者に相続税はかかりません。使うには、納める税額が0円になる場合でも、申告期限までに分け方を決めて申告書を出す必要があります。
くわしく
「半分までは無税」ではなく、1億6,000万円まで
配偶者は、亡くなった方と一緒に暮らし、財産を築いてきた立場です。民法でも、夫婦は互いに協力して暮らすものとされ、子と一緒に相続するときの配偶者の相続分は2分の1と定められています。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。(民法752条)
子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。(民法900条1号)
配偶者の税額軽減では、この法定相続分(子がいれば2分の1)までは相続税がかかりません。さらに、法定相続分にあたる額が1億6,000万円より少ないときでも、1億6,000万円までは相続税がかかりません。
「配偶者は半分までなら無税」と聞くことがありますが、半分は上限ではありません。たとえば財産が1億円しかなければ、配偶者が全部を受け取っても1億6,000万円以下なので、配偶者に相続税はかかりません。半分(法定相続分)が上限になるのは、半分にあたる額が1億6,000万円を超えるほど財産が多いとき(配偶者と子が相続人なら、課税価格の合計が3億2,000万円を超えるとき)です。
| 課税価格の合計 | 半分(法定相続分) | かからない上限 |
|---|---|---|
| 1億円 | 5,000万円 | 1億円(全額) |
| 2億円 | 1億円 | 1億6,000万円 |
| 3億円 | 1億5,000万円 | 1億6,000万円 |
| 5億円 | 2億5,000万円 | 2億5,000万円 |
(配偶者と子が相続人の場合。「かからない上限」は、配偶者が受け取っても相続税がかからない額です。1億円の例では、全額を受け取っても0円です)
ただし、配偶者に多く渡すほど、配偶者が亡くなったとき(二次相続)に子が納める相続税が増えることがあります。配偶者にいくら渡すかは、下の「配偶者が亡くなったときの相続税も考える」のように、2回の相続を合わせて考えます。
軽くなる額の出し方
まず、通常の方法で相続税の総額を出し、実際に受け取った額の割合で各人に分けます。配偶者の分からは、次の額を差し引けます(相続税法19条の2)。
相続税の総額 × 次の①と②のうち少ない額 ÷ 課税価格の合計
- 配偶者の課税価格(配偶者が受け取った遺産の額)
- 1億6,000万円と、配偶者の法定相続分にあたる額(課税価格の合計×法定相続分)のうち多い額
配偶者が受け取った額が②以下なら、配偶者の分の相続税は全部差し引かれて0円です。②を超えると、超えた部分の割合に応じて配偶者にも相続税がかかります。
配偶者の法定相続分にあたる額が1億6,000万円を超えるのは、財産が多いときです。配偶者と子が相続人なら、課税価格の合計が3億2,000万円を超えるときで、そのときは法定相続分までかかりません。
数字で比べると
次の例で、配偶者が受け取る額を変えたときの税額を比べます。
- 相続人は配偶者と子2人(基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円)
- 課税価格の合計は3億円。配偶者が受け取らなかった分は、子2人が半分ずつ受け取ります
- ほかの控除や特例は使わないものとします
相続税の総額は、分け方にかかわらず同じです。基礎控除を引いた2億5,200万円を法定相続分で分けると、配偶者が1億2,600万円、子が6,300万円ずつです。配偶者の分が3,340万円(1億2,600万円×40%−1,700万円)、子の分が1,190万円ずつ(6,300万円×30%−700万円)で、相続税の総額は5,720万円です。
この例では、配偶者の法定相続分にあたる額は1億5,000万円(3億円×2分の1)なので、②は1億6,000万円です。表の「取得額」は配偶者が受け取る額、「税額」は納める相続税です。
| 取得額 | 配偶者の税額(万円) | 子2人の税額(万円) | 合計(万円) |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 0 | 約3,813 | 約3,813 |
| 1億5千万円 | 0 | 2,860 | 2,860 |
| 1億6千万円 | 0 | 約2,669 | 約2,669 |
| 3億円(全部) | 約2,669 | 0 | 約2,669 |
たとえば配偶者が1億6,000万円を受け取ると、配偶者の分は5,720万円×1億6,000万円÷3億円で約3,051万円で、同じ額が差し引かれて0円です。子2人の分は、残りの約2,669万円です。
配偶者が全部を受け取ると、配偶者の分は5,720万円ですが、差し引けるのは約3,051万円までなので、約2,669万円を配偶者が納めます。1億6,000万円を超えて受け取っても、この例では合計は約2,669万円から下がりません。
金額は説明のための概算です。実際の申告では、端数の処理や、ほかの控除・特例の有無で変わります。
配偶者が亡くなったときの相続税も考える
配偶者が多く受け取ると、今回の相続税は少なくなります。ただし、その財産は、配偶者が亡くなったとき(二次相続)に子が相続し、そのときには配偶者の税額軽減がありません。
上の例で、配偶者にもとの財産がなく、受け取った財産がそのまま残り、二次相続の相続人が子2人で、法令も今と同じとすると、次のようになります。
| 取得額 | 今回(万円) | 二次相続(万円) | 2回の合計(万円) |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 約3,813 | 770 | 約4,583 |
| 1億5千万円 | 2,860 | 1,840 | 4,700 |
| 1億6千万円 | 約2,669 | 2,140 | 約4,809 |
二次相続の相続税は、配偶者が受け取った額から基礎控除4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を引き、子2人の法定相続分で計算しています。たとえば1億円なら、5,800万円を2人で分けて2,900万円ずつ、2,900万円×15%−50万円=385万円で、2人で770万円です。
この例では、今回の相続税がいちばん少ない分け方と、2回の合計がいちばん少ない分け方が違います。配偶者のもとの財産、年齢や暮らしに使うお金、受け取る財産の種類で結果は変わるので、分け方は2回の合計で比べて決めます。
使うための条件
- 法律上の配偶者であること:婚姻の届出をした人が対象で、内縁の人は対象になりません(相続税法基本通達19の2-2)。婚姻期間の長さは問いません。
- 申告書を出すこと:納める税額が0円になる場合でも、申告書に軽減の明細を書き、戸籍謄本と、配偶者が受け取った財産がわかる遺言書の写しや遺産分割協議書の写しを添えます。協議書の写しには、相続人全員の印鑑証明書も添えます。
- 申告期限までに分け方が決まっていること:分けられていない財産には使えません。まとまらないまま申告するときは、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておけば、3年以内に分けたあとで使えます(遺産分割がまとまらないまま、申告期限が来たら?)。
- 隠した財産は対象外:財産を隠したり仮装したりしていた部分は、軽減の計算に入れられません。
期限と注意
- 申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。配偶者の税額軽減で0円になる場合も、この期限までに申告書を出します。
- 未分割のまま申告したあとで分けたときは、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をして、軽減を使った税額に直します。
- 配偶者が受け取る額は、今回の相続税だけでなく、配偶者が亡くなったときの相続税も合わせて比べます。
親の記事の相続税の申告期限から逆算するでは、10か月の中で、分け方の話し合いをいつまでに進めるかをまとめています。
根拠
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 相続税法基本通達 第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係
- 国税庁 No.4155 相続税の税率
- 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 法務省「婚姻について知ろう」(夫婦の協力・扶助)
- 相続税法 第19条の2(e-Gov 法令検索)
制度・一次資料の確認日:2026年10月25日。税額は、相続開始日の法令と、ご家族の状況・財産の評価に応じて計算します。
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