基礎控除の「法定相続人の数」は、どう数える?(養子・相続放棄)
相続税がかかるかどうかは、まず遺産の額を基礎控除と比べて考えます。家族に相続を放棄した人や養子がいるとき、人数の数え方しだいで基礎控除の額が変わります。
結論
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。この人数は、相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして数えます。養子は、亡くなった方に実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までを数に入れます。
くわしく
だれが相続人になるか(民法の順位)
数える前に、民法で決まる相続人を確かめます。配偶者は常に相続人です(民法890条)。そのほかの家族は、先の順位の人がいないときに限って、後の順位の人が相続人になります。
| 順位 | 相続人 | 民法 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子。先に亡くなった子がいれば、その子(孫など) | 887条 |
| 第2順位 | 父母・祖父母など。子や孫がいないとき | 889条1項1号 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹。先に亡くなった人がいれば、その子(甥・姪) | 889条1項2号・2項 |
先に亡くなった人の代わりに、その子が相続人になることを代襲相続といいます。兄弟姉妹の代襲は、甥・姪までです。
相続放棄があっても、人数は変わらない
相続を放棄した人は、民法上は初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。それでも、基礎控除の「法定相続人の数」は、放棄がなかったものとして数えます(相続税法15条2項)。
たとえば配偶者と子2人の家族で、子2人がそろって放棄すると、民法上は亡くなった方の父母(父母などがいなければ兄弟姉妹)が相続人になります。この場合も、基礎控除で数えるのは配偶者と子2人の3人です。
養子は、数に入れる人数に上限がある
養子も民法上は子として相続人になります。ただし、相続税の「法定相続人の数」に入れる養子は、実子がいれば1人、実子がいなければ2人までです(相続税法15条2項)。
次の人は実子とみなされ、この上限の対象になりません(同条3項、相続税法施行令3条の2)。
- 特別養子縁組で、亡くなった方の養子になった人
- 配偶者の実子(いわゆる連れ子)で、亡くなった方の養子になった人
- 亡くなった方と配偶者が結婚する前に、特別養子縁組で配偶者の養子になっていた人で、結婚後に亡くなった方の養子になった人
- 亡くなった方の子が先に亡くなっていたなどの理由で、代わりに相続人になった孫など
2つ目と3つ目は、亡くなった方と配偶者の婚姻期間中に、亡くなった方の養子になった場合に限ります(相続税法基本通達15-6)。配偶者が先に亡くなったあとも、亡くなった方が姻族関係終了届を出すまでは、婚姻期間に含めます(民法728条2項)。
また、養子を数に入れることで相続税の負担を不当に減らす結果になると認められる場合は、その養子を数に入れないことがあります(相続税法63条)。
人数と基礎控除の例
| 家族構成 | 法定相続人の数 | 基礎控除 |
|---|---|---|
| 配偶者と子1人 | 2人 | 4,200万円 |
| 配偶者と子2人 | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者と子2人(子1人が放棄) | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者と子2人(子2人とも放棄) | 3人 | 4,800万円 |
| 実子1人と養子2人 | 2人 | 4,200万円 |
| 実子はなく、養子3人 | 2人 | 4,200万円 |
| 配偶者と、先に亡くなった一人っ子の子2人 | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者と兄弟姉妹3人(子・父母などはいない) | 4人 | 5,400万円 |
同じ人数を使う計算
この「法定相続人の数」は、基礎控除のほかにも使います。放棄の扱いと養子の上限も、同じように当てはまります。
- 生命保険金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
- 死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
- 相続税の総額:課税される遺産を、法定相続人が法定相続分どおりに取得したものとして計算する
ただし、相続を放棄した人が受け取った生命保険金や死亡退職金には、非課税枠を使えません。人数には入るのに、ご本人は枠を使えない点に気をつけます。
期限と注意
- 相続税の申告・納付は、通常、亡くなった日の翌日から10か月以内です。課税価格の合計が基礎控除以下なら、相続税の申告はいりません。ただし、小規模宅地等の特例などを使うことで基礎控除以下になる場合は、申告が必要です。
- 相続放棄の申述は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で行います。放棄しても基礎控除の人数は変わりません。
- 前の結婚での子や、養子縁組をした人がいないかを、亡くなった方の戸籍で確かめます。家族が知らなかった相続人がいると、人数も基礎控除も変わります。
- 申告までの流れと、そのほかの期限は「相続税の申告期限から逆算する」にまとめています。
根拠
- 相続税法 第12条・第15条・第16条・第63条(e-Gov 法令検索)
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」
- 国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
- 国税庁 相続税法基本通達「第15条《遺産に係る基礎控除》関係」(15-6 配偶者の実子等の意義)
- 国税庁 質疑応答事例「相続税法第15条第3項の規定により実子とみなされる養子の範囲」
- 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
- 国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
制度・一次資料の確認日:2026年10月23日。個別の人数は、相続開始日と家族の状況に応じて確認します。