アパートの敷地は、どれだけ評価が下がる?(貸家建付地・賃貸割合)
亡くなった方がアパートや貸家を建てて人に貸していた土地は、「貸家建付地」として、自分で使う土地より低く評価します。どれだけ下がるかは、借地権割合・借家権割合・賃貸割合の3つで決まります。
結論
貸家建付地の評価額は「自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」です(財産評価基本通達26)。借地権割合60%の地域で満室なら、自用地としての価額より18%(60%×30%×1.0)下がります。空いている部屋の分は下がりませんが、一時的な空室なら賃貸しているものとして計算できます。建物(貸家)も、固定資産税評価額から借家権割合×賃貸割合の分を差し引きます。
くわしく
計算に使う4つの数字
評価明細書(土地及び土地の上に存する権利の評価明細書)の第2表の「貸家建付地」の欄で、次の4つを掛け合わせます。
| 数字 | 中身 | どこで確かめるか |
|---|---|---|
| ① 自用地としての価額 | 自分で使っているとした場合の評価額 | 路線価地域は、路線価に土地の形などの補正をして面積を掛けた額(評価明細書の第1表)。倍率地域は、固定資産税評価額に倍率を掛けた額 |
| ② 借地権割合 | 30%〜90% | 路線価図の、路線価の数字の後ろの記号(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。倍率地域は、評価倍率表の「借地権割合」の欄 |
| ③ 借家権割合 | 国税局長が定める割合 | 財産評価基準書の「借家権割合」(令和6年分は、すべての都道府県で30%) |
| ④ 賃貸割合 | 0〜1 | 亡くなった日に賃貸している部屋の床面積の合計 ÷ 全部の部屋の床面積の合計 |
評価額 = ① − ① × ② × ③ × ④
①の計算は、路線価地域なら土地の形や道路との接し方による補正、倍率地域なら固定資産税の「価格」のコラムにまとめています。借地権割合・借家権割合は、亡くなった年分の財産評価基準書で確かめます。
賃貸割合は、部屋ごとの床面積で数える
賃貸割合は、アパートの部屋(各独立部分)ごとに、亡くなった日に賃貸しているかを見て、床面積で計算します。各独立部分とは、壁・扉・階で区切られ、独立した出入口がある部分です。部屋の数や家賃の額で割合を出すのではありません。
数字の例
普通住宅地区で路線価30万円(記号D、借地権割合60%)、土地の形による補正がない200㎡の土地に、2階建て10室(1室50㎡、合計500㎡)のアパートが建っているとします。建物の固定資産税評価額は2,000万円、借家権割合は30%です。
① 自用地としての価額:30万円 × 200㎡ = 6,000万円
| 亡くなった日の状況 | 賃貸割合 | 差し引く額 | 土地の評価額 |
|---|---|---|---|
| 満室 | 500㎡ ÷ 500㎡ = 1.0 | 6,000万円 × 60% × 30% × 1.0 = 1,080万円 | 4,920万円 |
| 2室が空室(一時的な空室に当たる) | 1.0として計算できる | 1,080万円 | 4,920万円 |
| 2室が長く空室 | 400㎡ ÷ 500㎡ = 0.8 | 6,000万円 × 60% × 30% × 0.8 = 864万円 | 5,136万円 |
| 全室が空室(一時的な空室を除く) | 0 | 0円 | 6,000万円(自用地と同じ) |
検算すると、満室は6,000万円 ×(1 − 0.18)= 4,920万円、2室が長く空室なら6,000万円 ×(1 − 0.144)= 5,136万円で、同じ答えになります。
建物(貸家)は「固定資産税評価額 − 固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合」で評価します(財産評価基本通達93)。
| 亡くなった日の状況 | 計算 | 建物の評価額 |
|---|---|---|
| 満室 | 2,000万円 − 2,000万円 × 30% × 1.0 | 1,400万円 |
| 2室が長く空室 | 2,000万円 − 2,000万円 × 30% × 0.8 | 1,520万円 |
一時的な空室に当たるか
賃貸割合は、原則として、亡くなった日に実際に賃貸している部分で計算します。ただし、継続して賃貸してきた部屋が、亡くなった日にたまたま空いていただけなら、賃貸しているものとして計算してかまいません。国税庁は、次のような事情から総合的に判断するとしています。
- 亡くなる前から、継続して賃貸されてきた部屋か
- 前の入居者が出たあと、すぐに次の入居者を募集したか
- 空いている間、ほかの用途に使っていないか
- 空いていた期間が、亡くなった日の前後の例えば1か月程度など、一時的な期間か
- 亡くなった後の賃貸が、一時的なものではないか
募集をやめていた部屋や、物置に使っていた部屋は、一時的な空室とは言えません。
小規模宅地等の特例を重ねる
貸していた土地は、親族が相続して申告期限まで貸付けを続け、土地を持ち続けると、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)で、200㎡までの部分の評価額を50%減らせます(租税特別措置法69条の4)。例の土地は200㎡なので、満室なら全部が対象です。
4,920万円 − 4,920万円 × 50% = 2,460万円
重ねるときは、次の点に気をつけます。
- 亡くなる前3年以内に新たに貸付けを始めた土地は、原則として対象になりません。亡くなった方が3年を超えて事業的規模の貸付け(特定貸付事業)を続けていた場合は、この制限はかかりません。
- 空いていた部屋に対応する部分の土地は、一時的な空室でなければ対象になりません。賃貸割合が1でないときは、申告書の第11・11の2表の付表1(別表)で、対象になる面積を分けて計算します。
- 自宅の土地(特定居住用宅地等)と一緒に使うときは、「特定居住用の面積 × 200/330 + 貸付事業用の面積」が200㎡以下になるように調整します。
自宅の土地の特例は、自宅の土地は、相続税で8割減る?にまとめています。
貸家建付地にならない場合
貸家建付地として評価するのは、借家権の目的になっている家屋(人に賃貸している家屋)の敷地だけです。
| 場面 | 土地の評価 |
|---|---|
| まだ貸していない | 自用地。賃貸用に建てた建物でも、亡くなった日に誰にも貸していなければ下がらない |
| 空き家になった貸家 | 自用地。貸していた一戸建てが、亡くなった日に空き家になっている場合 |
| 子が無償で借りた土地 | 親の土地は自用地。子が親の土地を無償で借りて(使用貸借)アパートを建て、人に貸していても同じ |
| 人に貸した土地 | 貸家建付地ではなく貸宅地。亡くなった方が土地を貸し、借りた人が自分の建物を建てている場合で、自用地としての価額から借地権の分を差し引く別の計算 |
申告の準備で集めるもの
- 賃貸借契約書と、亡くなった日の部屋ごとの入居状況の一覧(管理会社に任せていれば、管理会社に作成を頼む)
- 各部屋の床面積がわかる資料(建物の登記事項証明書、図面)
- 空いていた部屋があれば、退去日・募集を始めた日・次の入居日がわかる資料(募集の広告、管理会社とのやりとり)
- 建物の固定資産税の課税明細書か評価証明書
- 亡くなった年分の路線価図か評価倍率表(借地権割合)と、財産評価基準書の借家権割合
生前の備えとしては、退去が出たらすぐに次の募集を始め、その記録を残しておくことです。一時的な空室かどうかを、申告のときに説明しやすくなります。
期限と注意
- 相続税の申告・納付は、通常、亡くなった日の翌日から10か月以内です(相続税の申告期限から逆算する)。
- 賃貸割合は、亡くなった日の状況で決めます。亡くなった後に入居が決まった部屋は、一時的な空室に当たるかどうかで扱いが分かれます。
- 一時的な空室かどうかは、事実関係から総合的に判断されます。退去・募集・入居の日付がわかる資料を残します。
- 小規模宅地等の特例は、税額が0円になる場合でも、申告書を出さないと使えません。申告期限まで貸付けを続け、土地を持ち続けることも要件です。
- 借地権割合・借家権割合は年分ごとに定められます。亡くなった年分の財産評価基準書で確かめます。
根拠
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価
- 国税庁 財産評価基本通達26(貸家建付地の評価)
- 国税庁 財産評価基本通達93(貸家の評価)
- 国税庁 質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」
- 国税庁 質疑応答事例「貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価」
- 国税庁 質疑応答事例「宅地の評価単位−使用貸借」
- 国税庁 No.4613 貸宅地の評価
- 国税庁「路線価図の説明」
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「借家権割合」(令和6年分)
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁「共同住宅の一部が空室となっていた場合」(小規模宅地等の特例)
- 租税特別措置法 第69条の4(e-Gov 法令検索)
制度・一次資料の確認日:2026年10月27日。評価額は、亡くなった日の入居状況と、その年分の財産評価基準書に応じて計算します。
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