土地の形や道路との接し方は、相続税の評価にどう関係する?(路線価の補正)
路線価のある地域の土地は、路線価に面積を掛けるだけでは評価が終わりません。奥行の長さや、角地かどうかで額を補正します。相続した土地の評価額がどう変わるかを、数字の例でまとめます。
結論
路線価地域の宅地は、まず「正面路線価×奥行価格補正率」で1㎡あたりの額を出し、角地などの加算や、間口・形・広さなどの補正を決まった順に当てはめてから、地積(面積)を掛けて評価します。奥行は長さに応じて補正し、標準の範囲より長い・短い土地は額が下がります。角地や、表と裏の両方が道路に面した土地は額が上がります。間口が狭い土地や、形がいびつな土地も、決まった率で額を下げます(財産評価基本通達15〜20など)。計算の順番は、申告書に添える「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)」の欄の順番です。
くわしく
補正の種類
| 土地の様子 | 補正の名前 | 額 |
|---|---|---|
| 奥行が標準より長い・短い | 奥行価格補正 | 下がる |
| 角地(2本の道路が交わる角) | 側方路線影響加算 | 上がる |
| 表と裏が道路に面している | 二方路線影響加算 | 上がる |
| 間口が狭い | 間口狭小補正 | 下がる |
| 間口に比べて奥行が長い | 奥行長大補正 | 下がる |
| 形がいびつ(不整形地) | 不整形地補正 | 下がる |
補正の率は、土地のある地区の種類(普通住宅地区、普通商業・併用住宅地区など)ごとに、国税庁の表で決まっています。地区の種類は、路線価図の路線価を囲む記号でわかります。
評価明細書での計算の順番
相続税の申告では、路線価地域の宅地の1㎡あたりの額を、評価明細書(第1表)の欄の順に、次のように出します。当てはまらない欄はとばします。
- 1 一路線に面する宅地:正面路線価 × 奥行価格補正率 = A
- 2 二路線に面する宅地:A + 側方路線価(裏面の道路なら裏面路線価) × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率(裏面の道路なら二方路線影響加算率) = B
- 3・4 三路線・四路線に面する宅地:B に、3本目の道路の分を同じように足して C、4本目の道路の分を足して D
- 5-1 間口が狭小な宅地等:A〜D のうち当てはまる額 × 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 = E
- 5-2 不整形地:A〜D のうち当てはまる額 × 不整形地補正率 = F
- 6 地積規模の大きな宅地:A〜F のうち当てはまる額 × 規模格差補正率 = G
- 7 無道路地:(F または G のうち当てはまる額) × (1 − 控除の割合) = H
- 控除の割合 = 通路部分の価額 ÷ (F または G の額 × 地積)。上限は 0.4(40%)です
- 通路部分の価額は、接道義務(建物を建てる敷地が道路に接していなければならない、建築基準法の決まり)を満たす最小限の通路を設けるとした場合の、その通路の部分の額です(実際に使っている道路の路線価 × 通路部分の地積。奥行価格補正などはしません)
- 8-1 がけ地等を有する宅地:A〜H のうち当てはまる額 × がけ地補正率 = I
- 8-2 土砂災害特別警戒区域内にある宅地:A〜H のうち当てはまる額 × 特別警戒区域補正率 = J
- がけ地もあるときの特別警戒区域補正率 = 特別警戒区域補正率表の率 × がけ地補正率。0.50 が下限です
- 9 容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地:A〜J のうち当てはまる額 × (1 − 控除の割合) = K
- 10 私道:A〜K のうち当てはまる額 × 0.3 = L
- 通り抜けできる私道など、不特定多数の人の通行に使われている私道は評価しません
- 自分の宅地に出入りするためだけの路地状の部分は私道として扱わず、その宅地と一体で評価します
(番号は評価明細書の欄の番号です)
当てはまる補正を、すべて重ねて掛けられるわけではありません。たとえば、間口が狭小な宅地等(5-1)と不整形地(5-2)は、どちらか一方の欄で計算します。不整形地補正率は、間口狭小補正率なども織り込んで決めます。がけ地等(8-1)と土砂災害特別警戒区域(8-2)の両方に当てはまるときも、8-1 の結果にさらに掛けるのではなく、8-2 の欄で1回だけ計算します。
最後に出た1㎡あたりの額に地積を掛けたものが、その宅地の評価額(自用地の評価額)です。人に貸している土地や、貸家を建てている土地は、ここから借地権などの分を差し引きます。
正面の道路を決める
2本以上の道路に面している土地は、どれを「正面路線」にするかを先に決めます。それぞれの路線価に奥行価格補正率を掛けた額が高いほうが正面路線です。額が同じときは、道路に接している長さが長いほうを正面にします。
数字で見ると(普通住宅地区)
次の3つの土地を比べます。どれも普通住宅地区にあり、正面路線価は1㎡あたり30万円とします。
- A 中間の土地:間口15m、奥行20m(300㎡)。道路は正面の1本だけ
- B 角地:Aと同じ形で、右側にも路線価25万円の道路が通っている
- C 奥行の長い土地:間口15m、奥行26m(390㎡)。道路は正面の1本だけ
普通住宅地区の奥行価格補正率は、奥行10m以上24m未満が1.00、24m以上28m未満が0.97です。角地の側方路線影響加算率は0.03です。
| 土地 | 1㎡あたりの額 | 評価額 |
|---|---|---|
| A 中間の土地 | 30万円 | 9,000万円 |
| B 角地 | 30万7,500円 | 9,225万円 |
| C 奥行の長い土地 | 29万1,000円 | 1億1,349万円 |
A:評価明細書の1の欄だけで終わります。30万円×1.00=30万円。30万円×300㎡=9,000万円です。
B:2の欄まで使います。正面路線は、30万円×1.00と25万円×1.00を比べて、高い30万円のほうです。側方路線の分は、25万円×1.00(側方路線から見た奥行15mの補正率)×0.03=7,500円です。1㎡あたり30万7,500円×300㎡=9,225万円で、Aより225万円高くなります。
C:1の欄だけで終わります。奥行26mの補正率は0.97なので、30万円×0.97=29万1,000円です。29万1,000円×390㎡=1億1,349万円で、補正をしない場合(1億1,700万円)より351万円低くなります。
Cは、奥行(26m)が間口(15m)の2倍未満なので、奥行長大補正はかかりません。どの土地も間口が15mあるので、間口狭小補正もかかりません。
金額は説明のための例です。実際の評価では、地区の種類、土地の形、私道かどうか、土地の広さ(地積規模の大きな宅地)なども確かめます。
間口が狭い土地、いびつな土地
間口が狭い土地や、間口に比べて奥行が長い土地は、使いにくさを反映して、奥行価格補正をした額にさらに補正率を掛けます。
旗竿地や三角形の土地のように形がいびつな土地は、土地を囲む長方形(想定整形地)と比べて欠けている部分の割合(かげ地割合)と、地区・面積に応じた率で額を下げます。
期限と注意
- 相続税の申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
- 路線価と補正率の表は、亡くなった年の分を使います。地区の種類は、路線価図の記号で確かめます。
- 角地でも、側方の道路に一部しか接していない場合や、角地としての使い勝手がない場合は、加算の額を調整します。
- 自宅の土地は、補正をした後の評価額から、さらに小規模宅地等の特例で減らせることがあります(「自宅の土地は、相続税で8割減る?(小規模宅地等の特例)」)。
親の記事の相続税の申告期限から逆算するでは、10か月の中で、財産の評価をいつまでに進めるかをまとめています。
根拠
- 国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価
- 国税庁 財産評価基本通達 第2章第2節 宅地及び宅地の上に存する権利
- 国税庁 奥行価格補正率表(財産評価基本通達 付表1)
- 国税庁 土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(PDF)
- 国税庁 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(令和6年分以降用、PDF)
- 国税庁 No.4620 無道路地の評価
- 国税庁 No.4622 私道の評価
- 国税庁 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価(平成30年12月、PDF)
- 国税庁 質疑応答事例「正面路線の判定(1)」
- 国税庁 路線価図の説明
- 相続税法 第22条(e-Gov 法令検索)
制度・一次資料の確認日:2026年10月26日。土地の評価額は、亡くなった日の年分の路線価・補正率と、土地の形や使い方に応じて計算します。
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